魚というと、脊椎動物の最初の段階でなにかと機能的に劣っているように考えてしまいますが、実は驚くべき能力をもっていたりします。
私が数+年昔に学校で習った魚というのは、脊椎動物の最初の段階でまだまだ進化していないというものでした。たぶん以下のような表が試験に出ると言われたような気がします。
卵生 | 体温 | 心臓 | |
魚類 | 卵生 | 変温 | 1心房1心室 |
両生類 | 卵生 | 変温 | 2心房1心室 |
爬虫類 | 卵生 | 変温 | 2心房2心室(不完全) |
鳥類 | 卵生 | 恒温 | 2心房2心室(完全) |
哺乳類 | 胎生 | 恒温 | 2心房2心室(完全) |
下に行くほど進化していて、魚は機能的には一番下みたいに感じたことを覚えています。 しかしながらダイビングでいろいろな魚を見ていると、なかなかどうして、凄い魚もたくさんいたりするので、ちょっとまとめてみることにしました。
魚の1心房1心室は、心臓から送り出された血液がエラを通って新鮮な酸素を取り込んだ後に、全身に行きわたるようになっているということだったと思うのですが、実際にはもう少し複雑で、魚の心臓には動脈球というとても弾力性がある組織が付いています。心臓の補助的な役割をしているようで、エラにかかる血圧を調整しつつ血流を維持しているのだとか。
ゼブラフィッシュという魚は、心臓の20%が損傷しても再生できるそうです。哺乳類は心臓の再生能力は低いため、このゼブラフィッシュの再生能力はいろいろと研究されているようです。私たちの常識からすると心臓が損傷したら致命的なはずなのですが、その常識が当てはまらない魚がいるというのは凄いですね。
魚は哺乳類のように体温を一定に保つことができる恒温動物ではなく、周囲の温度に体温が左右される変温動物です。しかしながらマグロのような高速で泳ぐことができる魚は奇網と呼ばれる組織を持っていて、体温を高く保つことができるようになっています。変温動物の魚の体温は、海水と同じと考えがちですが、マグロなどは海水よりもはるかに高い体温を保持しているそうです。この高い体温のおかげで、高速で泳ぐことができるようになっています。
奇網は静脈と動脈が接近して配置され、かつ流れが逆方向になっていて、体の中を通過してきた静脈から、エラを通過して温度が下がった動脈へ熱交換できるようになっています。
変温動物といいつつも、恒温動物に近い温度を保てるようになっている魚もいるのですね。
魚は卵から生まれるというのは、ほとんど常識のようなものだと思いますが、しかしながらサメの中には卵ではなく子ザメとして生まれる種があります。
たとえばシロワニは、卵ではなく子ザメとして生まれます。ただし哺乳類のような胎盤があるわけではなく、お腹の中で卵を育てます。このようなタイプを卵胎生と呼ぶそうです。ちなみに最初に孵化した子ザメが他の卵を食べてしまうようで、なかなか凄い世界です。
さらに本当に哺乳類と同じ胎盤を持っているサメもいます。ダイバーに人気のアカシュモクザメは、胎盤をもっていて親サメと子ザメが繋がって育てます。正真正銘の胎生ですね。子ザメにはヘソもあるそうです。哺乳類以外で胎生なのは、このような一部のサメのみらしいのですが、魚といっても相当に進化していますね。
私たちは赤・青・緑の三色を認識できることはみなさんご存じだと思います。これは人間の目には赤・青・緑に反応するセンサーがあるからなのですが、それでは魚はというと、人間ほどは進化していないからきっと多くても二種類ぐらいのセンサーしかないのでは?と思っていました。
しかしながら、魚の目のセンサーは赤・青・緑に加えて紫と4種類もあるそうです。なんと人間よりも多いのですね。心臓の再生でも出てきたゼブラフィッシュは、さらに同じ赤のセンサーでも波長の違う2種類、緑については4種類をもっていて、上下で異なる波長の光を捉えることができるようになっています。また魚によっては川にいる時と海にいるときでセンサーが切り替わる種もいるそうです。
必ずしも人間がもっとも高機能な仕組みを持っているとは限らないようですね。
農業というと人間などの高度に発達した生き物だけができる行動のような気がするのですが、魚の中にはこの農業を行っている種がいます。その魚はクロソラスズメダイという種で、イトグサという植物を育てます。単に偶然にイトグサが生えているところに居るのでは?と思うかもしれませんが、なんとこのイトグサは、クロソラスズメダイの畑にしか生息していないそうです。クロソラスズメダイはイトグサ以外の植物を捨てることによって、イトグサだけが生育する場所を作っているのだとか(この行動を除藻と呼ぶそうです)。またクロソラスズメダイはイトグサしか食べることができないようになっているので、お互いに相手がいなくなってしまうと生きていけない状態になっています。
まるで人間とお米みたいな関係ですね(でも人間はお米なしでも生きていけるかな?)。
参考資料:インド-太平洋の共生