チョウチョウウオは、南国の象徴のような魚で、カラフルさなどからダイバーにも人気があります。せっかくなので魚図鑑の別館としてチョウチョウウオ専用の図鑑を作ってみました。地域ごとの違いや、似たもの同士の区別の方法、名前の整理などをしてみました。
チョウチョウウオは地域によって微妙な差があるようで、日本と同じように見えて実はモルジブでは違う種だったりすることがあります。そこで太平洋版とインド洋版で違うチョウチョウウオをまとめてみました。意外な発見があるかもしれません?
インド洋と太平洋の区別だとわかりやすいのですが、太平洋の一部で違う種になることがあります。
太平洋からインド洋まで広く分布しているチョウチョウウオがあれば、ここでしか見られないというチョウチョウウオもいます。固有種は、その場所に行ったら是非とも見たいですよね。といっても、最初は何度も撮影するのですが、実はそこにいくと大量にいて珍しい魚ではないことがわかり、だんだん撮影しなくなるなんてこともあります。
※以下の表は、これまでに撮影できた種についてで、これがすべてではありません。
ハワイ 固有種 |
ハワイも日本と同じ太平洋ですが、距離が離れているためにいくつかの固有種がいます。 |
紅海 |
インド洋とつながっていますが、インド洋とは違ったチョウチョウウオがいます。 |
東部太平洋 | ラパスやガラパゴスなどがある東太平洋は、同じ太平洋とはいっても日本からは遠い海です。日本では見られないチョウチョウウオがいます。 |
カリブ海 | 運河を越えた向こう側、大西洋のカリブ海には日本では見られないチョウチョウウオがいます。 |
小笠原 | 狭い日本といっても、魚は豊富です。中には日本の中でも小笠原でしか見られないチョウチョウウオがいます。(実際には伊豆でも見られるそうです。) |
地域別に異なるチョウチョウウオは、見た場所で名前がわかりますが、同じ地域に似ているチョウチョウウオがいると見分けるのが大変になります。見分け方などをまとめてみました。
フウライチョウチョウウオ |
トゲチョウチョウウオ |
トゲとフウライは、どちらも直角の模様ですが、トゲは背ビレの後ろが延びているところから区別できます。 フウライとニセフウライは、模様が直角か直線かで見分けられます。 ニセフウライとヒメフウライは、ヒメフウライには背ビレに赤い線があるところから区別できます。 ニセフウライとスダレも両方とも直線で似ています。黒い部分が大きい方がスダレですね。 |
ニセフウライチョウチョウウオ |
ヒメフウライチョウチョウウオ |
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スダレチョウチョウウオ |
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トノサマダイ |
ウミヅキチョウチョウウオ |
黄色に大きな斑点が1つというところが共通です。ウミヅキには青色の縁取りと線があるところから区別できます。スミツキトノサマダイは、斑点の色が青色ということと、薄い横縞があります。 |
スミツキトノサマダイ |
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ハタタテダイ |
ムレハタタテダイ |
ダイビングでも区別に悩むチョウチョウウオですね。中層に群れていたらムレハタ、珊瑚の周りに数匹でいたらハタタテと区別するのが簡単です。他の方法については、ハタタテダイを参照してください。 |
オニハタタテダイ |
シマハタタテダイ |
見かける頻度としてはオニハタタテダイの方が多いです。白い背びれが、目の後ろの白い帯とつながっているかどうかで区別できます。つながっているのがオニハタタテダイですね。 |
オウギチョウチョウウオ |
ハナグロチョウチョウウオ |
模様の色が違いますね。単なる色違いのような気もしますが、微妙に模様も違います。 |
チョウチョウウオ |
ツキチョウチョウウオ |
ツキチョウチョウウオは、白い部分が曲がっていますね。でもツキチョウチョウウオは日本では稀らしいので、日本でみたらチョウチョウウオ、サムイ&タオ島でみたらツキチョウチョウウオというのが簡単かも? |
ベニチョウチョウウオ |
アミメチョウチョウウオ |
同じように体の後ろ部分が黄色(橙色)になっていますが、アミメチョウチョウウオは体の模様がくの字型ではなくて、まさに網目のようになっています。頭にある黒い斑点の形状も違います。 |
フエヤッコダイ |
オオフエヤッコダイ |
どちらもほとんど同じ形、大きさですが、オオフエヤッコは口の長さがフエヤッコよりも長いです。他の方法については、オオフエヤッコダイを参照してください。 |
タキゲンロクダイ |
キスジゲンロクダイ |
ほとんど瓜二つです。細かい違いとしては、目を通る黒い線が胸ビレの方まで延びているのがキスジゲンロクダイで、エラぐらいで止まっているのがタキゲンロクダイですが、実際のところその場で区別するのはかなり難しそうです(キスジゲンロクダイを参照してください)。 |
せっかくならかわいいチョウチョウウオの名前を覚えたいところです。といっても数が多いだけになかなか覚えられません。ここでは、和名の命名について整理してみました。整理することによって、少しは覚えやすくなるかもしれません?
和名のほとんどは~チョウチョウウオという名前ですので、まずはチョウチョウウオがつかない和名について整理してみます。チョウチョウウオがつかない和名のほとんどは~ダイという名前ですが、いくつかは~チョウチョウウオでも~ダイでもない名前です。数は少ないのでかえって覚えやすいかもしれません。
~チョウチョウウオでも~ダイでもない独特な名前 独特な名前だけに、色や模様も独特で覚えやすいかも? |
チョウハン |
ユウゼン |
~カタギ |
ハクテンカタギ |
ヤリカタギ |
コクテンカタギ |
~ダイという名前のチョウチョウウオのほとんどは~ハタタテダイです。これらは背ビレが伸びているので区別は容易です。普通のチョウチョウウオの形をしていて~ダイとつくのは少ないので覚えやすいと思います。
背びれが伸びていない(ハタタテダイではない)けど~ダイという名前 | トノサマダイ |
スミツキトノサマダイ |
シラコダイ |
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~ゲンロクダイ ゲンロクダイと付くチョウチョウウオは、ほとんどが白地に茶色の模様です。 |
タキゲンロクダイ |
キスジゲンロクダイ |
他にゲンロクダイもいます |
残りは~ハタタテダイという名前です。二つはハタタテダイそのものの名前です。あとはがんばって覚えるしかないかな?
ハタタテダイそのものの名前 | ハタタテダイ |
ムレハタタテダイ |
~ハタタテダイ |
オニハタタテダイ |
シマハタタテダイ |
ツノハタタテダイ |
ミナミハタタテダイ |
ここからが本番で、すべて~チョウチョウウオという名前になります。最初はまさにチョウチョウウオから。
そのまま | チョウチョウウオ |
チョウチョウウオというそのままの名前です。やっぱりチョウチョウウオ科を代表する魚ということなのでしょうか?それとも特に目立った特長がなかったから?? |
改めてまずは体の特徴から名前がつけられているチョウチョウウオです。
体の特徴がヒント | トゲチョウチョウウオ |
背びれの先端がトゲのように長くなっていれば、トゲチョウチョウウオ。他にトゲがあるチョウチョウウオはいないので、かなりわかりやすいと思います。 |
ハシナガチョウウオ |
口が長いからハシナガだそうですが、なぜクチではない?と思いますよね?どうやらクチバシ(嘴:ハシ)からきているようです。他に口が長いチョウチョウウオといえば、フエヤッコダイがいますが、区別はしやすいと思います。 | |
テングチョウチョウウオ |
やっぱり天狗の鼻のように伸びた口から来ているのでしょうね。でも、どのチョウチョウウオも口は長いような気も? |
次に模様から名前がつけられているチョウチョウウオならヒントがあるようなものなので、覚えやすいような気がします。
点の数からわかる | イッテンチョウチョウウオ |
1です。黒の1つの斑点を持つチョウチョウウオは他にもいくつかいるのですが、このイッテンチョウチョウウオだけ、少し流れ出したような模様になっています。 |
シテンチョウチョウウオ |
4です。でも実際には2つしか斑点が見えませんね。両側で4なのでしょうか? | |
線の数からわかる | ミスジチョウチョウウオ |
3です。でも横の線はもっとたくさんあるような? |
シチセンチョウチョウウオ |
7です。 | |
ヤスジチョウチョウウオ |
8です。ぱっと見では7本しかないように見えますが、尾びれの後端に黒い線があります。 | |
他の模様からわかる | アミチョウチョウウオ |
網のような模様ということですね。でも同じ網からきたアミメチョウチョウウオがいるので、かなりややっこしいです。 |
アミメチョウチョウウオ |
こちらは網目模様ということでしょうか? | |
ゴマチョウチョウウオ |
ゴマをまぶしたような模様ですね。こちらもなかなかヒントになりそうです。 | |
アオタテジマチョウチョウウオ |
青い縦の縞模様からアオタテジマですね。 (和名では頭から尾びれにかけての方向が縦になります) |
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ハナグロチョウチョウウオ |
ハナグロチョウチョウウオは、確かに鼻が黒いですが、オレンジ色の線があったりと目立つ特徴があって、ヒントになりにくいかも? |
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セグロチョウチョウウオ |
セグロチョウチョウウオは、大きくて目立つ黒の斑点が背中にあるのでわかりやすいですね。 | |
ミカドチョウチョウウオ |
ミカドは帝ではなくて、三角からきているそうです。確かに体の模様は三角(くの字)ですね。 |
色から名前がついているものも、なんとかヒントになるかも?
色がヒント | コガネチョウチョウウオ |
コガネチョウチョウウオは、小金色というよりは茶色のような気もしますが、茶色の模様のチョウチョウウオは少ないのでヒントになると思います。 |
レモンチョウチョウウオ |
レモン色というよりは黄色のレモンチョウチョウウオですが、黄色のチョウチョウウオは他にたくさんいますが、たいていは斑点があったり、はっきりとした線の模様があったりします。 | |
ベニチョウチョウウオ |
おそらくは体の後ろの、黄色(どちらかというと橙色?)の部分を紅色と見立てて名前がついたのではないかと思われます。しかし紅色はもっと赤いですよね。ひょとすると紅花(これは黄色)から来ているかもしれません。ちなみにベニチョウチョウウオには、良く似たアミメチョウチョウウオもいるので注意が必要です。 |
ここからは模様や色がヒントになりません。ここは名前の由来から覚えるのがベストかもしれません。
群れの様子 | カスミチョウチョウウオ |
大きな群れを作ることで知られていて、遠くから見ると霞(カスミ)のように見えるから、もしくは海のなかが霞むから? |
模様から | ウミヅキチョウチョウウオ |
海が好きだからウミズキと思ったら、スジ模様が海、黒い大きな斑点が月にみえることからウミヅキと名前がついたようです。なかなかいい名前ですね。 |
アケボノチョウチョウウオ |
体の模様が朝日からの光の線のように見えるから曙(アケボノ)なのでしょうか?斜め模様があるチョウチョウウオは他にもいますが、白黒ではっきりとした線がたくさんあるのはアケボノだけです。 | |
オウギチョウチョウウオ |
数本の黒い線が、扇(オウギ)もしくは扇子の骨組みに似ているのでしょうか?ちょっと無理があるような?でも線の数で名前がつくよりは、こういった想像力を働かせた名前のほうが親しみがわきますよね? | |
ミゾレチョウチョウウオ |
霙(ミゾレ)からきっと来ていると思いますが、ちょっと想像しにくいですね。黄色の体色に小さな斑点が、カキ氷に黄色のシロップをかけたように見えるのかもしれません?そうすると白は上に載っている生クリーム?なわけはないですね。 | |
スダレチョウチョウウオ |
たぶん簾(スダレ)のような模様ということなのでしょうけど...確かに縦の細い模様がスダレのような感じと言えなくもないですが、縦の細い線でしたらニセフウライチョウチョウウオも同じような模様です。それなのに、こちらはちゃんとしたスダレ、もう一方はニセなんて名前がついてしまって、なんか嫌われることでもしてしまったのでしょうか? | |
クラカケチョウチョウウオ |
漢字は鞍掛(クラカケ)らしいのですが、どこから鞍がでてくるのか不明です。間違って、パンダチョウチョウウオと覚えてしまいそうです。 | |
行動から? | フウライチョウチョウウオ |
フウライは、風来から来ているようです。広辞苑によれば「どこからともなく来ること」とか「おちつかなこと。気まぐれ」との意味のようですね。フラフラとあてもなさそうに泳ぎ回っているということなのでしょうか? 水中で見た感じでは、他のチョウチョウウオと変わらないような気がするのですが、でもかっこいい名前だと思います。 |
色から? | カガミチョウチョウウオ |
どうして鏡(カガミ)なんでしょう?輝かしい名前とは裏腹に、チョウチョウウオにしては黄色とかがなく白黒のみのモノトーンでちょっと地味です。このモノトーンなところが、かえってカガミを連想させるのでしょうか? |
名前の由来が不明なものは、もうそのまま覚えるしかない?
不明? | ツキチョウチョウウオ |
月それとも付き?もしくは運のツキ?目立った模様がないので、名前の由来がわかりません。もうそのまま覚えるしかない? |
テンツキチョウチョウウオ |
こちらもツキです。天突きなのか、点突きなのか、名前の由来がわかりません。他のチョウチョウウオと少し違った体型(なんとなく六角形)をしているので区別はしやすいと思います。 |
※他にもウラシマチョウチョウウオがいるのですが、写真が撮れていません。
覚えられましたか?